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[治療の推奨度] 変形性股関節症への各種手術評価

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[治療の推奨度] 変形性股関節症への各種手術評価

週末は大阪で勉強会が開催されました。「股関節痛の予防と改善」をテーマに姿勢や歩き方を中心に日常生活動作で気をつけるべきポイントを写真や動画を交え、ご紹介させていただきました。前半の講義では股関節痛の原因を頭の中で整理していただき、後半の実技では、実際に身体を動かすことを通じて、その理解を深めていただきました。各回70名、30名と伴に満席でキャンセル待ちも20名程いらっしゃったとお聞きしております。今回参加いただけなかった方のためにも早速第2回目を計画していただいております。また次の機会にぜひご活用下さい。

股関節痛を抱え、病院を訪ねても、その場で痛みを取り去るような治療は少なく、薬の処方と簡単な運動指導のみ。その後は経過観察で、悪化をすれば手術を宣告されることが常でしょう。しかし、タイミングよく症状にあった保存療法にさえ巡りあえれば、おそらく、その後は手術のことなど全く考えずに生活を送ることだってできたはずです。今回の勉強会でも、1年振りに数名の方に御会いしましたが、おひとり、依頼を頂戴した当初は3センチの太ももの左右差、それが今ではジョギングができるまでに回復されていました。この一年で素晴らしい努力をされていましたね。

今、私が想い描くのはまずはより多くの方に「股関節痛の存在」を知っていただくこと。それと方向性を誤れば、やがて「手術」の可能性が待ち受けていること。そして、その予防には「理学療法士」というリハビリ専門職種が大いに貢献できる可能性があるということです。今後も全国へ向け発信し続けていきたいと考えています。

さて、今回も講義の時間、実技の際にも多くの質問を頂戴しました。日々の生活のこと、トレーニングに関すること、股関節の構造についてなど、どれも、今直ぐに解決しておきたい疑問の数々です。こうした疑問こそ曖昧な自己判断で過ごすことなく、確実に理解することで痛みの解消と予防に近づけるかも知れません。

「和式トイレでしゃがめない」と訴えていた方がいらっしゃいました。股関節を外に広げるのに痛みがあり、怖さを抱えているようでした。床に仰向けになって、数本の筋肉を緩めるとすーっと脚は広がり始めました。ご本人が一番驚かれたでしょうが股関節痛も当初は非常にシンプルです。臼蓋形成不全があるからといって、必ずしも将来的に進行し手術が必要になるわけではありません。但し、極端にかばったり労り過ぎると、可動域制限が起こり日常動作が不便になり、やがて筋力低下が生じます。本当に動けなくなってしまうのです。

私が股関節痛の保存療法に取り組み始めた当初、痛みの治療と併せ実践していたのは、当時大学病院時代に学んできた「身体運動の基礎作り」です。それは単に下肢の筋力トレーニング、ストレッチに留まらず、日常生活場面から身体機能を復活させようとする働きかけです。患者さんをベッドに寝かせ淡々と施術を繰り返すのではなく、患者さん自らが主体となって動ける環境づくりこそが股関節痛の克服と併せ自信の獲得に繋がります。

その原点は、OARSI:Osteoarthritis Research Society International、変形性関節症の予防と治療に携わる医療者のための、世界的な国際団体から発信される最新の情報です。ここでは患者さんと医療者がよい良い解決策を探るために、医学的根拠に基づいた手引きが作成され全世界に発信されます。日本語にも翻訳され出版されていますが、日本語版では本書に含まれていない表現もあり、専門家であればまずは英文から読み進めることをお勧めします。

変形性股関節症の定義に関することから最良な治療法、その安全性や持続性、効果なども膨大なデータの中から厳選され、それぞれプロの専門家のフィルターを通し推奨されます。変形性関節症の概念は未だ不確かで、現在もなお研究が重ねられ、変わりつつあることが触れられています。
ここからが本題です。

病院では教えてくれない股関節治療の真実です。皆さんが診察室で勧められる各種股関節手術。人工股関節や骨切り術、関節鏡視下手術。あまりにも直に手術を宣告されるので、痛みの解決にメスを入れることは当たり前だと思ってはいないでしょうか。各治療方法の臨床上の信頼性と有効性が、下記のような推奨Gradeで紹介されています。
推奨度には、A~Iまで5段階ありAランクの治療が最も安全性が高く、科学的裏付けも十分な治療方法です。では、変形性股関節症における
推奨Grade Aの治療法は何かといえば「保存療法」です。
保存療法の柱を成すのが「患者教育」。運動やトレーニングを行うことよりも、先ずは「股関節症という病気への理解」「日常生活動作の指導」が優先されます。
次に気になるのが、各手術方法に対する評価です。例えば、日本でも今盛んに行われる人工股関節の手術は、
推奨Grade B。若い方にも積極的に勧められる骨切り術、RAOでは、
推奨Grade B、
キアリ骨盤骨切り術ではGrade C、
股関節鏡視下手術でも同様にGrade C。

ご覧頂きましたようにこれが世界のスタンダードです。OARSIに限らず、今ではアメリカのリウマチ学会でも同じような評価がされています。日本語版には、「全患者に適応すべきではない」「特定の団体に利益が偏らないように細心の注意を払った」などの表現も確認されます。こうした背景を受け、一番危機感を抱かなければならないのは、日本の理学療法士でしょう。急増する手術件数に歯止めをかけられるのは、唯一、我々リハビリ職です。従来通りの後療法を続け満足していれば、今後10年経とうが20年経っても、股関節治療の未来は変わらないでしょう。質の高い情報は既に世に溢れています。上手に活用しイニシアチブをとり、股関節痛の悩む方たちの前でもっと力を振るっていかなければならないと思っています。

勉強会にお越し下さる皆さんもきっと現在の股関節治療に疑問を感じ、これではマズいのではないかと不安に思われたはずです。薬の服薬と簡単な運動、経過観察の後に手術を宣告されるのが、現在の日本の医療機関で行われる股関節治療の現状です。皆さんそれぞれに改善の可能性を秘めているはずです。それらを見つけ出すのが、我々の仕事であり保存療法の実践です。大阪でも定期的に出張セラピーを開催しております。ぜひご相談下さい。

ginzaplus 佐藤正裕(理学療法士)



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