股関節の病気

変形性股関節症とは

変形性股関節症とは

変形性股関節症とは、臼蓋形成不全(寛骨臼形成不全)、先天性股関節脱臼の他、一般に、遺伝、加齢、体重、性別など複数の要因を背景に軟骨の欠損を生じ、関節周辺の骨組織に変化を来した結果、生じた関節症状や兆候のある疾患群と定義されます。 その病態は関節軟骨にとどまらず、「軟骨下骨、靭帯、関節包、滑膜、関節周囲筋」など広範囲に及ぶ病気です。

変形性股関節症と股関節痛

そのため股関節痛の原因は、必ずしもレントゲンやMRIなどの画像上に映るものとは限りません。 整形外科的な診療の多くは、軟骨のすり減りや骨格の異常や変形、あるいは最近では関節唇の損傷など、画像所見上に映る関節の「中」の構造上の異常に痛みの原因を求めます。 ところが実際には、関節の中だけではなく、画像では発見しづらいような、関節の「外」にも痛みが存在することが多く、専門家を悩ます要因のひとつです。 不幸にして必要のない手術が勧められ、手術後まともに歩けない方も増えています。 股関節痛の原因の特定には、関節外の要因を取り除き、それでも尚痛みが残れば、関節内を疑う方が、身体への負担という面から考えても望ましいでしょう。

股関節の痛みと関連痛

股関節に問題があっても必ずしも股関節部位(=そけい部)に痛みを訴えるとは限りません。 初発症状は、腰の痛みだったりおしりの痛み、あるいは脛(スネ)の外側など、股関節疾患を直接に想起しにくい部位に痛みを訴えることが度々あります。 慢性的な腰痛を患い、なかなか症状が改善されずレントゲンを撮った結果、実は股関節に問題があったとケースも珍しくありません。

変形性股関節症と進行性

一般的に、臼蓋形成不全(寛骨臼形成不全)や先天性股関節脱臼を含む変形性股関節症の診断が下ると、下記のような経過を辿る、「進行性の病」と理解されることが多いようです。

  1. 前股関節症
    臼蓋形成不全(寛骨臼形成不全)があり、軟骨のすり減りは軽く、関節のすき間は保たれている状態。
  2. 初期股関節症
    関節面のすき間にわずかな狭小化が確認され、骨硬化、骨が硬くなりはじめ、関節の適合性に異変が生じる時期。
  3. 進行期股関節症
    臼蓋周辺に骨棘(こつきょく)形成を認め、関節のすき間が明らかに狭くなった状態。骨硬化と伴に、骨嚢胞(こつのうほう)も確認される。
  4. 末期股関節症
    関節のすき間は無くなり、関節としての適合性が消失された状態。

しかしながら、実際には、こうした流れに沿って症状が進行する例ばかりではなく、レントゲン上は進行期や末期でても、痛みはない、杖なしでも歩ける、逆に初期や前股関節症であっても、強い痛みを訴える方もいらっしゃいます。 つまり、必ずしも症状と病期とは一致しないのです。 同様にこの後にも述べますが、病期のみを優先し、治療を選択することも、股関節症の治療においては妥当ではありません。 日本では、世界で発信される変形性股関節症の治療ガイドラインとは異なり、独自の分類を採用しており、「臼蓋形成不全(寛骨臼形成不全)」の存在が確認されるだけで「前股関節症」、つまり、変形性股関節症と診断されてしまうのです。 これも、患者様へ不安と心配を植え付け、進行を促す一因子とも捉えられるかも知れません。

変形性股関節症の治療方法

2008年に、OARSI (Osteo Arthritis Research Society International) という国際的な変形性関節症に関する学会から、変形性股関節症の治療ガイドラインが世界へ向け発表され、その治療内容や方法が見直され始めています。 股関節の痛みにはどういった介入方法が有効なのか、効果比較試験や研究結果を検証することで、効果のある治療方法が明らかになりました。

現在日本で広く行われる人工関節置換術は、保存療法が有効ではない場合のみ推奨されます。世界では、保存療法(推奨度97%)が医学的にも科学的な根拠のある治療方法(エビデンス)として強く支持されているのです。

※海外と日本の変形性関節症のガイドラインの比較はこちら
変形性関節症のガイドライン(世界)
変形性関節症のガイドライン(日本)

変形性股関節症と保存療法

どのような年齢、いかなる状況においても、変形性股関節症の治療の第一優先は「保存療法」です。 保存療法とは、外科的治療を用いない治療方法のことで、主に薬物療法と薬物を用いない療法に大別され、安全性、合併症の発現が少ないとの理由から薬物を用いない保存療法が推奨されます。

保存療法の中心は「患者教育」と「運動療法」であり、病気への理解と日常生活動作の指導、インソールなどを活用した運動療法が痛みの改善、運動機能の回復に期待されています。

股関節痛を訴える時期とは、出産前後、育児や仕事、親御さんの介護など、社会的な役割が増す中で生じるケースが多く、直ぐには手術に踏み切れない方も少なくはないはずです。 そうした場合には、まずは保存療法を試してみること勧めします。 変形性股関節症の治療では、個々のライフスタイルを尊重した治療選択が大切です。 外科治療が試されるのは、保存療法では効果を示さなかった場合のみです。 腫瘍や骨折を除き、一刻を急ぐ痛みなど、股関節治療においては、それほど多くはないはずです。 最終的に外科手術に移行せざるを得ないにしても、手術前に保存療法を実践しておくは、その後のリハビリにも有効です。

変形性股関節症と外科治療のリスク

除痛緩和に優れた外科治療に人工股関節置換術があります。 最近ではMIS(Minimum Invasive Surgery)などの最少侵襲手術なども行われますが、症状に合わせた治療選択が望まれます。 初期の変形性股関節症におけるMISは安全でも、先天性の脱臼既往歴があったり、経過が長く変形が強い場合には、それだけ手術も複雑になり、術後のリハビリにも大きく影響を与えます。 手術前の状態によっては、一週間や10日間の入院リハビリでは、その後の生活や職場復帰に支障を来すかも知れません。 手術を受ける患者様の中には、手術さえすればもうすっかり完治する、そうお考えの方も多いでしょう。 実際にはスムーズに改善される方ばかりではないようです。

自分の骨を削る手術、寛骨臼回転骨切り術(RAO:Rotational acetabular osteotomy)や臼蓋内転骨切り術 (AA0:Acetabular adduction osteotomy)、低侵襲寛骨臼回転骨切り術 (CPO:Curved periacetabular osteotomy) などでは、筋肉への負担も大きく、社会復帰に時間を要する手術です。 同様に股関節唇損傷に対する股関節鏡による手術も、簡易的な手術のイメージとは異なり、術後のリハビリ期間が比較的長く、その後のフォロー体制、術後のリハビリには通えるのか、近所への医療機関へは紹介していただけるのか、など手術後のケアも含めた、執刀医との打ち合わせが不可欠でしょう。

変形性股関節症の施術事例(全80件)

[施術事例] 60代 変形性股関節症 末期 ペルテス病

手術を回避 手術後
昨年末には、著名人の方の手術の様子がテレビ放映されたことで、たくさんの質問が寄せられました。最近では男性でも、股関節の痛みに悩まされている方が増えています。手術が専門の先生方は、骨の変形や軟骨のすり減りが痛みの原因と捉え、早いタイミングで手術を勧められることもあるようですが、痛みの原因は決してそれだけではありません。 ご相談いただいたのは60代の男性 . . .

[施術事例] 70代 変形性股関節症 末期 テニス

保存施術+ 手術を回避
中高年のスポーツ、テニスやバドミントン、卓球などで股関節症を発症させてしまうケースが増えています。熱中し過ぎるあまり、大事な股関節を失うことがないよう、特に軸足を作るスポーツでは、ケアのことも忘れないでいただきたいと思っております。 ご相談いただいたのは、70代の男性です。 学生時代からのテニスを続け、股関節痛を感じるようになったのは60代に入 . . .

[施術事例] 50代 骨切り手術→人工股関節→再置換

保存施術+ 手術後
手術後のご相談が相次いで寄せられます。 2024年までの日本の股関節学会における研究発表の場では、骨切り手術では人工股関節へのリスクが。また、人工関節では、骨折、感染、緩み、脱臼などによる再置換のリスクが報告されています。 ご相談いただいたのは、40代の女性です。 幼少期に股関節のトラブルはなく、20代に入ってからエアロビクスで股関節を痛 . . .
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変形性股関節症のハッシュタグを含むブログ記事(全514件)

[保存施術] 患者側からみた痛みの世界

日本では、股関節に痛みが生じると、整形外科にかかるのが一般的ですが、おそらく近い将来、広い選択肢の中からご自身の望む方法で、痛みを解消することができるようになるでしょう。 骨の変形があっても痛みがない人がいたり、軟骨が十分にあっても痛みを訴える人もいたり。整形外科的な考えだけでは、痛みの原因を説明できないことが多いからです。 股関節痛の改善にヒ . . .

[保存施術] 筋力と股関節痛の関係について

股関節周囲の筋力が低下してくると、痛みを発症させるリスクが高まります。 キーとなってくるのは、股関節の骨よりも「筋肉」。 関節のそばには6つのインナーマッスルが付着し、外側には大殿筋を主体としたいくつものアウターマッスルが存在します。 おしりの奥のインナーマッスルが働かなくなると、股関節があるべき場所におさまらなくなり、次第にズレが生じま . . .

[施術申し込み] 関節症と痛みについて

日本では「変形性股関節症」と「痛み」の関係について誤って理解されていることが多くあります。 特に、病院の先生方はレントゲンやMRIなどの画像所見を参考に、軟骨のすり減りや骨の変形に痛みの原因を求めますので、手術しか方法がない、という結論に至ります。 しかしながら、施術事例でも繰り返しご紹介している通り、軟骨がなくなり、骨が変形し、骨嚢胞が存 . . .
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