大腿骨頭壊死症とは、何らかの理由で大腿骨の一番上端の骨頭といわれる骨部分への血流が阻害されることで壊死に陥り、関節面が陥没したり変形することで、股関節痛や運動障害を引き起こす病気です。 その分類は大きく、基礎疾患など明らかな原因によって発症する「続発性(症候性)大腿骨頭壊死症」と原因が明らかではない「特発性大腿骨頭壊死症」に分けられます。 ステロイドの大量摂取やアルコール多飲などが背景因子として知られていますが、骨髄内圧上昇説、脂肪塞栓説、血液凝固機転異常説、血管病変説、微小骨折説など諸説疑われ、どういった過程を経て阻血性変化が成立するのかは未だ明らかではありません。 血流が阻害され、大腿骨頭壊死症が発生も、疼痛を自覚しないこともあり、壊死の発症と疼痛の発生は必ずしも一致しません。
治療にあたっては、壊死の範囲や大きさ、痛みの程度、内科的な合併症などが考慮され決定されます。
壊死や痛みの程度から予後が良いと判断される場合には、保存療法が選択されます。 骨頭圧潰に伴う骨折と骨髄浮腫に伴う骨頭内圧上昇が生じる時期に、最も痛みを強く感じますが、これも長く続くわけではありません。 炎症期さえ過ぎれば、次第に痛みも緩解してきます。 保存療法では、痛みの強い炎症期をいかに過ごすかが大切であり、痛いのでかばい過ぎると、炎症期を去った後、関節の硬さや筋力低下をもたらします。 痛みの強弱に応じて、杖などの歩行補助具も活用し、負担になる日常動作に留意しながら、できるだけ運動障害を後々の生活に残さないことを考えなければなりません。 炎症期さえ無事に乗り越えられれば、その後、圧潰した骨が修復されることも保存療法では期待できます。
手術療法には、自骨による方法と人工関節による方法が用意されます。 大腿骨頭を一度切り離し、壊死部を回転させ、健康な骨で荷重面を作る関節温存手術を目的とした大腿骨頭回転骨切り術、大腿骨内反骨切り術、最近では濃縮自家骨髄血移植術などの新しい手術方法も行われます。 また人工関節による方法では、圧潰した大腿骨頭だけを取り替える人工骨頭置換術(Bipolar Hip Arthroplasty:BHA)、あるいは股関節部全てを入れ替える人工股関節全置換術(Total Hip Arthroplasty:THA)が行われます。 骨切り術と比べると、早期に荷重ができる利点があり、入院期間も短期で済む代わりに、耐久性の問題があり、将来的な再置換のリスクが心配されます。