ブログ

[研究報告] 手術後の満足度

ブログ検索#研究論文

[研究報告] 手術後の満足度

更新 2014年03月19日(水)
カテゴリ 股関節の保存施術
ハッシュタグ #変形性股関節症  #人工関節  #骨切り  #研究論文  #股関節の手術  #合併症・後遺症 
「痛みをとることを優先させてきたけど、かえって脚が萎えてきちゃって」今回の大阪ではこうした訴えが多く聞かれました。皆さん様々な方法を試し、痛みの改善に努めていらっしゃいます。鍼やマッサージ、指圧などどれも痛みには効果があると医学的にも報告されています。ただ、忘れてはならないのは、皆さんの「筋力」の存在です。痛み治療に専念するあまり、筋力のことをおざなりにしてはいないでしょうか。痛みがある側の太ももが細くなってきてはいませんか。膝上の皮膚がタプタプしてきていませんか。

保存療法が順調かどうかは、もちろん痛みの変化も指標にはなりますが、常に心得ておきたいのは、これまであった「筋力」が保たれているのかどうか。さらに申し上げれば「可動域」は維持され、改善傾向にあるのかどうか。もっと言えば、脚の長さに差が出てはいないかどうか(=脚長差)。これらは、全て保存療法によるリスクです。痛みの改善を優先させるばかり、実際にこうした副産物を抱えてしまうことがあるようです。筋力低下、可動域制限、脚長差など。痛みがなくなった代わりに、しゃがめない、靴下や爪切り動作が不自由になった、歩く際に傾く等、頻繁に聞かれるエピソードです。既に分かっているのですから、リスクを見据えた注意深い観察力も必要でしょう。

以前、私のところへも相談がございました。
「歩き方を学びたいけど痛みがとれてからでも大丈夫でしょうか?」
お気持ちは分かります。

ただ保存療法のリスクにも挙げましたように、痛みがとれてからでは、それまでの保存療法の取り組みの内容方次第では、間に合わない、あるいは、目標を低く設定せざるを得ない場合も出てきます。ご自身の判断のみならず、専門家からも、シビアな視点で見守っていただくことも必要でしょう。保存療法のリスクは上記の如く、さて、手術に関しては、いかがでしょうか。
今回の大阪では、手術に迷われている方に何名かお会いしました。杖なしで歩ける方もいらっしゃいます。それでも担当の先生は、
「手術さえすれば、痛みなく歩けるようになる」と、手術を勧めて下さっているようです。医師に言われれば、迷いますよね。どうしましょう。

参考になるかも知れません。データがございますので、一部共有させていただきます。股関節の手術治療を受けた患者さん、300人に対して行われたアンケート調査結果です。

手術後の満足度

▲手術治療を行った股関節疾患患者症例の職場復帰についてーアンケート調査による検討ー2005
手術に対する「満足度」調査では、"非常に満足"、または、"満足"と回答した患者さんは、骨切り術群では67%、人工股関節群では82%。

満足度との関連因子

▲手術治療を行った股関節疾患患者症例の職場復帰についてーアンケート調査による検討ー2005
手術後の他部位の痛み、復職できないことが満足度を下げる要因になっています。術後の就労状況については、骨切り群で62%、人工股関節群で57%とどちらも、就労率は術前と比較して低下が著明であり、復職時期については、骨切り群では術後3ヶ月以内で0%であるの対し、人工関節群では術後3ヶ月以内で38%という結果です。骨きり手術の場合、長期後療法が術後職場復帰に対する問題です。また、手術経験者のうち約4人にひとりは術後の疼痛を訴え、その部位は腰部(10%)、膝関節(5.7%)、その他(3.3%)との内訳です。

不満例

▲手術治療を行った股関節疾患患者症例の職場復帰についてーアンケート調査による検討ー2005
術後"不満"と答えた患者さんの問題点です。骨切り術では、脚の長さに差が生じる脚長差(きゃくちょうさ)の問題、人工関節手術後では、膝痛や腰痛がここでも目につきます。

まとめ

一般的にRAOに代表されるような自骨の骨切り術は、関節温存が可能であることがメリットです。しかし一方で、長期的なリハビリも避けられず、出産や子育て、復職など、
将来設計を見据えた決断が望まれるでしょう。また人工関節は、様々なアプローチ方法や人工関節そのものの開発も進み、私が大学病院にいた当時10年前と比べれば、格段に良くなっています。手術後の成績も約8割が満足との結果。ただ、それでも、他関節の痛みや脚長差に問題を抱え、お越し下さる方が後を絶ちません。

痛みがあった当時の癖は、関節を取り替えても、治らないことが良くあります。痛みが減り、負担になるパターンで活動性だけが増せば、身体のあちらこちらへも痛みを招くのでしょう。特に、最近気になるのは、全国の短期入院を勧める病院で手術を経験された方たちです。退院後、つま先が内側を向き、軽いX脚様の歩き方をしながらお越しになられます。術中における設置角度の問題なのか入院中のリハビリ問題があるのか、定かではありません。しかし、こうした格好で動き回れば時間の問題です。

保存療法にもリスクがあるように、やはり手術にも、リスクがつきまといます。現在の状況と今後の生活、そして手術、保存療法のリスクを天秤にかけ、最も信頼のおける専門家のもと治療に臨めれば、万が一の際にも心は救われることでしょう。よくなることだけを想像すべき、とは私自身も思いますが、実際には、人工でも自骨でも、不満を抱え生活されている方は増えています。保存療法も同様に、痛みだけに捉われず、自分の身体は真っ直ぐになっているのか、関節の動きはどうなのか、常にアンテナを張り巡らせ、寝たきりにならない、"健康寿命"を延命させるような保存療法が必要だと感じています。

ginzaplus 佐藤正裕(理学療法士)



更新 2014年03月19日(水)
カテゴリ 股関節の保存施術
ハッシュタグ #変形性股関節症  #人工関節  #骨切り  #研究論文  #股関節の手術  #合併症・後遺症 

最新記事






▼「ブログ」その他のコンテンツ
全カテゴリ 股関節の保存施術 施術事例 お知らせ メデイア プライベート
Copyright © 2004-2024 ginzaplus | 当サイトの全コンテンツは著作権法、関連条約・法律で保護されており、無断での複製・転載・転用を固く禁じます。| 利用規約 | 個人情報保護方針
Web System & Design by R-Crafz