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[医師からの提言] 股関節唇損傷の診療方針

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[医師からの提言] 股関節唇損傷の診療方針

「症状が軽度であれば保存療法を行う。股関節痛の原因としては、股関節内の炎症が最も考えられるが、発症には、股関節周囲のアンバランスや腰椎周辺の筋の過緊張なども関係していることが多く、腰椎や股関節の運動療法も有効である。」

「股関節周囲や腰椎のリラクゼーションを行い、その後に股関節の回旋運動や屈伸運動などのモビリゼーションを行う。とくにハイレベルのスポーツ選手では、過度の筋力トレーニングにより腰部あるいは肩甲部の異常な筋緊張を認めることがあり、これらを総合的に改善する必要がある。」

「自分でできる運動療法を指導し、3週間程度自分で行わせる。ある程度症状を軽減するのに有効であり、再燃しない症例もある。」

股関節唇損傷に対する保存療法を勧めて下さる医師が少ない中、貴重なコメントです。先ずはじめに、保存療法の実践にあたって共通して大切なこととは、痛みの鑑別診断でしょう。医師であっても、理学療法士であっても、診断名とはまた別に、痛みの所在がどこにあるのか、改めて見定める必要がありそうです。

例えば、医師であれば、関節内へ注射を打つことで、痛みの所在を明らかにすることができるかも知れません。また理学療法士であれば、関節外、主に筋肉にアプローチすることで、痛みの存在個所も明確にできるでしょう。また保存療法の実践の上で気をつけなければならないのは、上記に記される、過度な筋力トレーニングです。筋力トレーニングもその内容によっては痛みと隣り合わせ。誤った方法や認識から、痛みから抜け出せずに苦労されている方も多くいらっしゃいます。理学療法士でさえも未だ筋トレ思考が根強く残ります。

たとえ股関節症への保存療法であっても股関節に限局したような運動を勧めることはまずありません。それよりもむしろ全身の調和を大事にし、ご自身の体重や重力などをうまく利用しながら、自然な股関節の動き引き出していきます。専門的にはHip Spine Syndromeという表現があります。股関節の柔軟性の欠如は、腰へも影響を及ぼします。
股関節痛の方が、腰痛や背中の痛みに悩まされているように保存療法においてもできるだけ早い段階で股関節の正しい使い方を学ばせるってことは、とても大切です。

最後に、「我が国で多い臼蓋形成不全症では、関節唇の切除や縫合術により逆に関節症がより進む可能性もあるほか、人工股関節全置換術へと移行したとの合併症の報告もあり、手術には十分な注意が必要である」リスク管理の徹底は不可欠です。保存療法でも関節鏡による手術であっても、治療側はもちろん、患者さん側も心得ておくことが必要があります。保存療法も効果がないまま続ければ、手術の最適の時期を見失うことさえあります。また関節鏡視下術であれば、変形性股関節症への進行、あるいは若くしての人工関節が避けられない場合も出てきます。
ginzaplus 佐藤正裕(理学療法士)



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