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[学会活動] 第40回日本股関節学会に参加して

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[学会活動] 第40回日本股関節学会に参加して

先週は「第40回日本股関節学会学術集会」に参加してきました。

内容

最新の人工股関節手術手技に関する話題から急増する股関節唇損傷の実態解明、更には保存療法の効果や介入手段の検討など、各分野における名立たる専門医から貴重なお話しが伺え非常に学びの多い充実した二日間となりました。毎回この「情報量」と「スピード」には驚かされます。やはり股関節専門医の先生方の研磨された研究の背景には、国内外問わず膨大な数のup to dateな知見が盛り込まれ、股関節唇損傷の報告を拝聴しても病態への理解や手術適応の判断など、正確でより安全な治療を目指そうとする意図が伝わってきます。

保存療法について

今回出席した各演題に共通して感じたのは、どの治療法においても「関節温存」「生物学的再建」を目指しているところです。変形性股関節症患者さんへの自家培養軟骨移植術の効果が報告されているように、再生医療の臨床応用が着実に進歩を遂げています。現在の股関節唇損傷の手術も、人工股関節であっても、もちろん保存療法もそうですが、できるだけ関節周囲の組織にはストレスを加えず、とにかく、元の状態に近づけるべく治療方法が選択される傾向が、今後益々価値を持つことになるでしょう。

保存療法に関するセッションも開催され、島根大学病院、鳥取大学病院、川崎医科大学、柳川リハビリテーション病院、公立富岡総合病院(群馬大学病院)山形大学病院など、各病院に所属する保存療法に精通した股関節専門医の先生方より下記のテーマから保存療法の短期的長期的効果、年代別の有効性や運動強度について討議が交わされました。

「変形性股関節症に対する装具療法の効果」
「変形性股関節症は保存療法で改善するのか」
「50歳未満の進行性・末期股関節症に対する保存的治療」
「変形性股関節症に対する新しい理学療法」
「変形性股関節症におけるWISH型股関節用S字型装具の効果」
「変形性股関節症の保存療法」

専門性が拮抗すると必ずしもどこの病院でも同じような保存療法を受けられるわけではありませんが、病院によりカラーがあり、ある病院では貧乏揺すりが勧められ、あるところでは装具療法が取り入れられるなど、伝統を引き継いだり、最新のトレンドを取り入れるなど、方法論も様々です。また「初期の股関節症の方にはどうするか」との座長の問いには、負荷をかける、または、負荷をかけない、意見は真っ二つに別れまたしが、山形大学の先生が、痛みの鑑別、性質を診ることの重要性を述べられ、

「筋腱移行部の痛みなのか。それとも滑膜炎なのか。それとも筋疲労によるものか」

原因によって、運動量を調整すべきとのコメントが印象的でした。ちなみに、世界的な研究の中では、270の論文中110の報告が、保存療法が効果があると説明し、最新のアメリカのリハビリテーション学会でもまずは理学療法を試みて、改善が見込めなければ薬、それでも難しければ手術、といった流れが広まりつつあるようです。話題の貧乏揺すりの効果についても言及され、意外にも、短期的には改善されても、長期的には悪化する例も多いなど、5年後、10年後と経時的にレントゲンを観察していくと、
一旦改善したはずの病状が再び増悪する恐れがあることも、述べられていました。

鳥取大学の先生は、「歩行」について触れられ、変形性股関節症患者さんにみられる肩の揺れなどを治し、「姿勢肢位によって股関節にかかる荷重を減らす方法を工夫する」
ことが保存療法では大切であることを主張され、その上で、整形外科医は、患者さんへ最も身近な存在でもある、優秀な理学療法士を育成すべきとの意見が上がりました。このセッションでも指摘されていたように「現在の医療とは手術をして回転させること」に重きが置かれています。一見、時代に逆行しているかのような保存療法にも効果があり、子育てや仕事、色々な事情で今すぐに手術に臨めない場合には、できるだけ保存療法を適用すべきとのコメントも聞かれました。

股関節唇損傷について

最後に股関節唇損傷についてですが、この数年で明らかに内容が充実しているのが分かります。近年の手術後成績を振り返り、新たな治療戦略を見出すきっかけとなっているようです。まず象徴するのは臼蓋形成不全を伴う股関節唇損傷。形成不全患者さんであれば、約8割が関節唇を損傷しているとの報告です。健常者と比較した研究では、痛みがない健常者にも多くの損傷患者さんがいることが分かり、誰にでも起こり得る可能性がある病態であることが、改めて示唆されていました。

特にサッカー選手やバレエやダンサーな、股関節を酷使するスポーツアスリートの場合、その頻度は高くなり、関節唇のみならず股関節周囲の骨に変形(=bump)が現れることも決して珍しくなく、そうした症状を有していても、痛みがある、ない、など症状も多様のようです。
「プロサッカー選手の股関節レントゲンにおける異常所見の頻度」

また臼蓋形成不全者の股関節唇は特徴的で、健常者と比べて、関節唇そのものが厚みを帯び、幅も広く、元々ストレスを受け易い構造になっています。そのため、普段の歩行動作においても、健常者よりより大きな負担が関節唇にかかることがデータにより示されていました。
「DDHと関節唇損傷における関節唇の形態特性」

他にも沢山の興味深い報告がありましたが、書き切れませんので、また後日、ここでの保存療法との効果を踏まえ、触れていきたいと思います。




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