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[研究論文] 股関節唇損傷は変形性股関節症へ移行しない

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[研究論文] 股関節唇損傷は変形性股関節症へ移行しない

股関節唇損傷と診断された方。実際に関節鏡の手術を終えられた方。

日本各地で股関節唇損傷のエキスパート医師の診療を受けた方たちを拝見します。日本では最新の手術。手術後、様々な問題点がみえてきます。特に気がかりなのは、そのリハビリ内容です。拝見する限りリハビリ内容にばらつきが目立ち、医師によっても術後の考え方は多様であり、関節唇損傷オリジナルのリハビリメニュー、プロトコルがまだ確立されていないようです。

実際に患者さん本人へも「荷重時期」や「運動内容」が明確に伝わっておらず、十分な説明も無く、自宅へ帰され、御自身の判断で地元の整形外科や民間療法を利用し、リハビリを継続されている方が少なくありません。執刀医師の考えが術後のリハビリ専門職、理学療法士へと浸透していないのが一番の問題です。患者さんのその後の仕事、家庭、生活に影響を与えるこの手術。

先日お会いした方も関節唇損傷の手術後。ところが、手術後に渡されたのは通常の人工股関節術後と同じメニュー。人工股関節の手術とは、切った組織やメスを入れる侵入経路も違うのでこれではせっかくの手術も...。特にアスリートを対象に行われた内視鏡術では、その後の活躍に大きく反映されます。

メジャーリーガー、ニューヨークヤンキース所属のお馴染、"A-Rod"ことアレックス・ロドリゲス選手、彼もまた股関節唇損傷の手術を受けた一人です。2009年に右股関節唇損傷の手術、直後は活躍したもののその2年後に急失速。今年は反対側の股関節の痛みを訴え手術に臨みます。当初は良くても、その後数年も経たないうちに同様の症状を反対側に抱えるようになる。

この1~2年の間にも股関節唇に対する内視鏡術には疑問符が投げかけられ、
医学系雑誌「The Journal of bone & Joint Surgery」では、関節唇損傷が必ずしも変形性股関節症へと進行するものではないと述べられています。

One recent study cast doubt. Dr. George Hartofilakidis and his colleagues at the
University of Athens in Greece followed 96 people with an average age of 49 with
hip impingement but no hip pain. They did not have impingement surgery.
http://web.jbjs.org.uk/cgi/content/abstract/93-B/5/580

ギリシャ・アテネ大学の医師ジョージらの研究によると未手術の股関節唇損傷患者さん96名、平均年齢49歳(16~65歳)、追跡調査を行った結果、

After 18 ½ years, 20 percent had developed arthritis, a rate that is not particularly
unexpected as people age. There was no reason to blame impingement for it. So
the researchers concluded that "prophylactic surgery is not warranted."

変形性股関節症へと移行したのは2割、約18年間、何の変化も起こら無かったのが残りの8割。股関節唇損傷と変形性股関節症の関係を否定しつつ、内視鏡術は予防的な手術として保障するものではないと結論付けています。

今も尚、専門医師から股関節唇損傷との診断を受け、その後の治療方針や内容を示され、不安になりお越しになられる方が増えています。早期であればメスを入れずに十分に改善が見込めます。しかし、通常のリハビリではなかなか改善しない、これもまた事実です。研究報告からも頷けるように、たとえ股関節唇損傷があっても、変形性股関節症に移行する可能性が少ないことが分かっている以上、股関節唇損傷との診断を受けた方、または既に手術を終えられた方へは、

"どうして"関節唇を損傷するに至ったのか。
"どういった"股関節の運動が関節内のストレスを及ぼすのか。

そのあたりの問題点を整理できると、自ずと実践すべきリハビリ内容が明らかになってくるように思われます。

ginzaplus 佐藤正裕(理学療法士)



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