様々なスポーツ活動にも関わってまいりましたが、バレエから人工関節へと迫られるケースが増えているようです。
今現在も全国から多くの生徒さんはじめバレエ教室を主催される先生方よりご相談をいただきます。手術を避けられるケースがほとんどではありますが、なかには(心身の)状況も深刻であり、手術を避けられないことさえあります。
何を、どのように対処すれば、手術は避けられるのでしょうか。
まず、考えなくてはならないのは、バレエの動きの特徴です。
こちらの方は、舞台活動の一環でトレーニングとしてバレエを取り入れていらっしゃいましたが、バレエ経験者であればご存知かと思いますが、1番のポジションでつまずいていらっしゃいました。
形から入ってしまい、肝心な筋肉の働きが伴っていません。
足先の向きやポーズにばかり気がいってしまい、無理な関節の動きから、身体各所に痛みを抱えていらっしゃいました。関節や骨を動かす意識も必要ですが、同様に、そこに筋肉の活動があるのかどうかまで確認しなければならないでしょう。このパターンで股関節症を発症させてしまう方、非常に多いです。
もう一度動きの原点に立ち戻って、身体の仕組みや、身体の動きの流れを確認することと、あとはもう一点、バレエのレッスン中の動作と普段の日常では動きが異なることも、頭に入れておく必要があるでしょう。
生徒さんばかりではなく、バレエの先生からも多くのご相談をいただきます。
こちらの先生は非常に熱心でした。バレエの基礎となる動きのメカニズムを事細かにご説明したところ、たいへん興味を持って下さいました。
私達のような股関節の専門家は、実際に手術の現場を診てきておりますので、股関節の中身がどうなっているのかをよく熟知しています。そのため、関節の内外へのストレスになる動き、例えば、関節唇損傷を引き起こす動き、または、関節周囲の靭帯への損傷を招くような動きなどには、細心の注意を払い動作指導を行っています。こうした関節組織に損傷を促すような動きの連続が、軟骨を消失させたり、骨をも変形させてしまうので、指導にあたる側は、常に股関節の安全性に配慮した運動課題の提示が求められます。
バレエのようにhyper flexibilityを要求されれば、上記トラブルとは上手に付き合っていく必要があります。ご自身が抱える違和感、痛みが、どこから来きていて、どんな動き方が誘発しているのか。その辺りまで深く追求できると、今後も安心して取り組んでいただけるでしょう。
バレエの先生には、生徒さんを守ってあげる責任があるはずです。先生方にこそ、知っていただきたい内容ですね。
開業当初から変わらずではありますが、やはり、この傾向は今後も続くのでしょうか。
スポーツの中でも、こうして生徒さんと先生が同じような症状に悩まれているのも、非常に珍しいと感じています。教え方や流儀なども根底にありそうですし、結構厳しい雰囲気との声も聞かれますので、実際のレッスンの様子なども気になるところです。比較すべきは自分自身でいいのではないでしょうか。昨日より今日の自分。他人と勝負することなく、柔軟性に長けている方ではまずは筋力強化を。そして、可動性に限界がある方は、無理をせずに。
健康のために再開した、あるいは、趣味ではじめたバレエから手術に至ってしまうのは、本当に残念で仕方がないです。避けられるはずの症状も、うっかり誤るとたちまち症状を悪化させます。ケアの仕方、痛みの対処方法にご存知の先生へも指導を仰ぎましょう。
股関節も、皆さんが思っているほど頑丈ではありません。年齢を重ねるごとに経年劣化し、まわりの筋肉も衰えます。若いときのようなフレッシュな状態とは当然異なりますから、ちょっとした刺激が災いとなり、関節症を引き起こす原因とならぬよう注意していただきたいですね。
ご自身にとっての得意と苦手を見つけ出し、リスクも念頭に起きながら、能力に見合ったオリジナルの鍛え方を見つけ出しましょう。
ginzaplus 佐藤正裕(理学療法士)