「股関節」とは、身体の中心に位置する関節であり、上半身と下半身をつなぐ、人体で最も大きな関節です。そのため、その周りにはたくさんの筋肉が付着し、二足歩行の人間にとっては「体重を支える」重要な役割を果たしています。
現代人にとっては「腰」はウィークポイントです。股関節を十分に働かす必要がなくなった現代社会は、腰に負担をもたらします。
人間の身体とは繋がっています。
股関節が本来の力を発揮できなくなることで、股関節の上下の関節、腰や膝などに痛みや違和感を生じさせます。普段の生活場面から股関節を上手に操れるようになることが、健康を保つ上での秘訣なのかも知れません。
70代の女性です。
当初は、坐骨神経痛のような症状を訴え、医師からは腰椎すべり症との診断を受けていました。医師の指示の下、スクリュー固定による手術が行われましたが、三年後には再び不具合を訴えはじめています。趣味でダンスを継続し、かばって動かし過ぎてしまったためか、側弯症も気になります。
股関節のレントゲンを撮ってみると、向かって右側の大腿骨(太ももの骨)の骨頭といわれるてっぺんの骨と、骨盤側が衝突しはじめていることがわかりました。
軟骨の隙間は消失し、脚長差も生じています。骨頭側と骨盤側には骨嚢胞(こつのうほう)といわれる骨の空洞、穴も確認されます。
腰をかばって生活したためか、今度は、股関節の状態も心配されます。
では、実際の歩き方はどうでしょうか。
腰の影響が股関節に現れ、今度は、健康であったはずの右脚の股関節にも不具合が現れはじめています。体重のかけ方に明らかに左右差が確認されます。
関節痛への対応は、パーツ・パーツ、単体で診ていく視点ももちろん必要ですが、特に、下肢のトラブルに関しては、こうして全体を通じて「機能を果たせているのかどうか」、トータルな視点で診ることも必要です。
股関節から腰、または、腰から股関節へと全身の繋がりを通じて痛みは波及します。こうした症状は、理学療法士が得意とする分野ですので、存分に活用していただきたいと思います。最小限の負担で、最大限の効果を獲得しましょう。
ginzaplus 佐藤正裕(理学療法士)