股関節痛との歴史は振り返れば2008年に遡ります。
当時は参考にする書籍も少なく、経験に頼らざるを得ない環境の中、唯一光を放っていたのが世界の変形性関節症のガイドラインです。OARSIやACR,またEULARなど世界の関節症に関する学術団体は、エビデンスに基づいた、安全で効果な方法をまとめ報告していました。それから約15年が経ち、昨夜もオンライン会議に参加させていただきましたが、変形性関節症も臨床、研究、教育とまさに成熟段階にあるといえます。
身近なところでは、再生医療の動向が気になるところでしょう。PRPや幹細胞、これらの治療後の患者さんのご依頼が急速に増えています。専門家会議からも有効性に関する報告が聞かれますが「股関節」に関しては、膝に比べ実証例が圧倒的に少ないように思われます。方法やその後のケアについては検討の余地がありそうです。
ginzaplusでは、2009年の開業時から昨月までの間に約5000例以上もの方にお越しいただきました。難しい例もありましたが、基本的な施術+運動プログラムに乗れれば、痛みは和らいできます。軟骨の存在の有無や骨の変形の程度などはあまり関係がないようです。
ウェブサイトでの施術事例は現在200例に満たない程度ではありますが、あと15年くらいで500例は目指します。その後は、その次の世代へと受け継いでいきたいと考えております。
40歳以降は、これまでとはまた別の人生です。
セカンドステージ、つまりは、20代、30代で得た経験が活かされます。これまで培ってきた知恵や工夫が試されるのがこれからの人生です。若い時と同じような感覚で乗り越えようと思っても、上手く行かない様子にストレスも感じることでしょう。でもここは、エイジングも楽しめる、受け入れられるようになれば、きっとご自身の満足のいくオリジナルの生き方を送れるようになるはずです。
身体を動かすこと、スポーツや運動もこの先の人生においてとても大切ですが、無理をして股関節を壊しては元も子もありません。これからは、一生歩けるための脚を育むための大事な時期です。過信することなく、状況をよくわきまえながら、この準備期間に見合ったスポーツ選択をしていきましょう。
赤ん坊で生まれてから自然に身についた歩行が、再び40代以降、その能力が失われかけています。寝たきり予防も、もう40代からでは遅いのかも知れません。
股関節痛の発症から解決もまさにヒューマンドラマです。いつ、どこで襲いかかってくるのかは、わかりません。この世界にも至るところにトリックが存在します。うまく掻い潜りながら、解決へとたどり着いていただきたいと思っております。
どうして、手術に至るのか。
私が、この仕事をはじめて真っ先に取り掛かったのは「手術に至った原因調査」です。
手術に至るような方では、共通した問題を抱えているように思えました。皆さん同じような主張があり、同様の格好で日常生活を過ごし、やがて、メンタルにも問題を抱え、手術を迫られます。この流れに乗せないためには、何が必要なのでしょうか。
先日お会いしたその方も同じように医療機関では手術の宣告でした。
診断を受け、安静を告げられ、瞬く間に症状は悪化。変形性股関節症は進行期から末期へと進行し、脚長差も現れていました。関節は硬くなり、ほとんど広がりません。しかしながら、昨年ご相談いただいてからは月ごとに症状は改善され、先日お会いした際には「メキシコに行ってきました」と嬉しそうに報告して下さいました。
短くなった脚や硬くなった関節はもう元には戻りません。変形した骨ももう元には戻らないでしょう。ただ、こうして取り組み方、日々の向き合い方次第では、痛みを上手にコントロールし、新たなステージを、これまでとは違ったスタイルで歩みはじめることだってできるのです。
皆さんには良くなる力は残されています。あとは、そのきっかけ作りです。
ginzaplus 佐藤正裕(理学療法士)