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[骨切り術] 予防的治療になり得るか

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[骨切り術] 予防的治療になり得るか

更新 2014年05月21日(水)
カテゴリ 股関節の保存施術
ハッシュタグ #臼蓋形成不全(寛骨臼形成不全)  #学会  #合併症・後遺症  #骨切り  #研究論文 
股関節痛への治療は、世界的な変形性股関節症のガイドラインに則れば、保存療法が治療の第一選択です。日本でもこれまで盛んに行われてきた人工股関節や骨切り術、あるいは最近話題の股関節鏡などよりも、保存療法が効果とその安全性から上位にランクされます。しかしながら、こうした意義ある医学的根拠も日本の医療機関では反映されにくいのが実情です。明らかに日本の課題です。

今月も手術後の依頼が毎日のように舞い込んできます。股関節痛の治療選択にあたっては、とにかく「はじめの情報」が極めて肝心です。どの先生にかかるかによって、皆さんが与えられる治療の選択肢も限られてくるのです。各専門分野におけるスペシャリストが必要であることはいうまでもありません。ただ同時に、幅広い知識と経験をもとに、股関節痛を多角的に捉え、症状に合わせたベストな治療法を提案できる専門家も必要でしょう。熟練された先生であれば、ご存知のはずです。手術による効果とその危険性も。

今日は、骨切り手術に関する情報をいくつかお届けします。長い歴史のある手術方法です。実際に起こる自骨の骨切り手術後の具体的なリスクについて、改めて最新の臨床データから考えてみましょう。例えば、2013年の昭和大学からの報告がひとつ参考になります。

「1984年から股関節症に対し寛骨臼回転骨切り術=RAOを行っているが術後の長期経過において関節症の進行を防止できず人工股関節置換術を余儀なくされる症例も存在する」と述べられるように、骨切り術を受けるにあたっては、将来的な人工関節も考慮する必要がありそうです。また、「2000~2012年にRAO術後人工関節を行った23例24関節について、RAO術後に末期股関節症となった症例に対しては、可動域の良好な時期にTHAを検討することが肝要である」とも報告され、手術後常に安定に経過するケースばかりではなく可動域に問題が生じるリスクも示唆されます。

さらに「RAOは人工股関節の"time saving procedure"としても有用な術式である」に象徴されるように、骨切り術も人工関節までの繋ぎと考えられているため、手術にあたっては執刀医師を入念な打ち合わせも避けられないでしょう。参照)RAO術後症例に行ったTHAの検討 THA施工時の問題点 Hip Joint 39巻 922-926 2013

ご覧のように骨切り術もリスクの捉え方は、執刀する先生により考え方が千差満別であり、手術をし一生持たせようと考える先生がいる一方で「もって10年」と明言され、
人工までの"時間稼ぎ"と考えている先生もいらっしゃいます。

2014年、千葉にある船橋整形外科病院からの報告では骨切り術の既往のある方では、初回の人工関節を受ける患者さんに比べ約10歳早く人工股関節の手術に向かわれています。参照)骨切り術が初回人工股関節全置換術に及ぼす影響 臨整外科49巻1号:89-93.2014
▲寛骨臼回転骨切り術後の人工股関節全置換術における3D-CTの有用性 Hip Joint 39巻 558-562 2013
それも50代、あるいは50歳未満に集中しています。人工の耐久年数を考えれば、生涯における複数回の手術も避けられないかも知れません。2013年、東京の日産玉川病院からも自骨経験者の人工股関節手術年齢は「2011年1月~2012年1月に初回人工股関節全置換術(THA)を行った492関節中、寛骨臼回転骨切り(RAO) 後の症例8関節、手術時平均年齢が49.9歳」と船橋整形と同様の報告です。

骨切り術経験者では人工股関節へのタイミングが早くなっているのが分かります。

人工物で治すより自分の骨で治しましょう、との発想が自骨を推進される先生方にもありますが、ご覧のように診察場面では触れらる事の少ないリスクにも配慮する必要があるでしょう。10代や20代で済ませればその後一生持たせられる、との説明に手術を踏み切られ、その後10年、20年経った今、不調を訴えお越しいただく方が増えはじめています。本当に、骨切り術が将来的な予防になっているのかどうか、検討してみる必要がありそうです。保存療法の視点から診れば、骨だけの問題ではなく、やはりそこへ至るまでには筋肉への処置は避けられず、その影響が10年以上たった今、じんわりと現れはじめているのかも知れません。
ginzaplus 佐藤正裕(理学療法士)



更新 2014年05月21日(水)
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