ブログ

[研究論文] 股関節唇損傷 関節唇と筋肉の痛み

ブログ検索#関節鏡・内視鏡

[研究論文] 股関節唇損傷 関節唇と筋肉の痛み

「股関節鏡視下手術は様々な股関節疾患に対して有用な治療法の一つであるが、術前の軟骨病変の把握が重要であり、特に臼蓋形成不全症例に対しては適応を十分に検討する
必要がある」
股関節疾患に対する関節鏡視下手術の経験: 中西整会誌 24 2012

臼蓋形成不全を伴う股関節唇損傷に対する治療には注意が呼びかけられています。数年前までは、股関節唇損傷の内視鏡術も、MRIや造影検査後発覚すれば直に手術、数週間で踏み切られた方もいらっしゃったようですが、術後を拝見していますと御本人の満足まで到達できていない様子です。医師は「手術は成功」と仰っても、患者さんのそれとはかけ離れているのを感じます。

このブログでも動画や画像を用いて、再三に渡り臼蓋形成不全を伴う股関節唇損傷の治療に対して警鐘を鳴らしてきました。手術後に軟骨欠損、人工股関節へとアドバイスされても、なかなか納得できるものではありません。最近では術後の影響も考慮されてか関節唇損傷が分かっても、半年、もしくは一年様子をみてそれでも痛みが残存するようなら手術、もし、痛みが引くようなら手術も取り止め、そうした診方が主流になりつつあるようです。

更に、昨年の股関節学会でも専門医から話題に上がったようですが、臼蓋形成不全を伴う股関節唇損傷には手術は否定的であるべきだ、との考えで一致している様子です。周知されれば、リスクあるこの手術も、今後減ることになるでしょう。

そして気をつけたのは「筋肉損傷」との鑑別です。股関節唇損傷と類似した症状に筋肉の問題が上げられます。これを診誤ると、必要のない手術に踏み切ってしまうことになりますので、医師による手術前評価、そして、何より患者さん自身の事前情報が鍵を握ります。
ちなみに、アメリカでは臼蓋形成不全に対する内視鏡術には既に積極的に行われず、さらに、類似症状として知られる、筋肉損傷との鑑別にも調査が実施されています。特に注意していただきたいのが、股関節を股がる大腿直筋(だいたいちょっきん)。(私が担当した)股関節唇損傷と診断された方では、ほぼ全例でこの筋肉に過剰な緊張を認めます。

大腿直筋とは、
股関節直上に位置し、ちょうど"股の付け根"に存在します。時折、悪さをし、股関節唇損傷と同様の痛みを発するのがこの筋肉です。筋肉のトラブルは、姿勢や動き方の影響を多く受けます。股関節唇もまた股関節への負担になる動きの繰り返しにより生じることが報告されています。損傷箇所がどこであれ、最終的には身体の使い方、股関節への余計なストレスを減らすことが再発予防、他の組織への更なる損傷を防ぐためも重要でしょう。

医学の世界も、この領域においても痛みの場所、結果に目が向きがちです。股関節唇も筋肉も黙って損傷し痛みを発するとは考えにくいものです。痛みの所在を明らかにすることも必要ですが、同時に、"どのような動き"がこの筋肉の緊張を強め、関節唇へも影響をもたらすのか、原因の検証にまで努める必要があると思っています。検証作業の積み重ねが、きっと、充実した術前・術後リハビリにも繋がるでしょう。

同じ痛みは繰り返したくないものです。何気ない日常動作、趣味活動、もう一度整理し、ぜひ確認してみて下さい。
ginzaplus 佐藤正裕(理学療法士)



最新記事






▼「ブログ」その他のコンテンツ
全カテゴリ 股関節の保存施術 施術事例 お知らせ メデイア プライベート
Copyright © 2004-2024 ginzaplus | 当サイトの全コンテンツは著作権法、関連条約・法律で保護されており、無断での複製・転載・転用を固く禁じます。| 利用規約 | 個人情報保護方針
Web System & Design by R-Crafz