「先生、もうブログは書かなくなっちゃったんですか」忙しさを理由にブログから遠去かり申し訳ございません。。。
関東の方には定期的にお目にかかれても、地方にお住いの方には中々お会いできませんので、せめてブログを更新する事で少しでも身近に感じて頂ければ、とも思っています。今日は先日参加した股関節学会の報告です。記憶が新しいうちに簡単ではありますがまとめて記しておきます。
まず、私自身が興味があった内容は以下の4つ。
「大腿骨頭壊死症の新しい予防と治療」
「股関節鏡治療の光と影」
「ボーダーライン寛骨臼形成不全の外来診療」
「成人への橋渡しとしての小児股関節治療」
「大腿骨頭壊死症の新しい予防と治療」
まず最初の大腿骨頭壊死については、最近上記診断名で施術を希望される方が急増しているため、最新の治療事情について知る必要があると感じ参加させて頂きました。
基本的な病態についてはホームページ
http://ginzaplus.com/jp/symptoms/05/ を参照していただき、治療の上で大切な考えとは、「発生」と「発症」どちらをターゲットに絞り治療を行うかです。一般的に壊死は発生しても無症状であることも多く、骨頭が潰れ圧壊し始めると痛みが生じます。今では骨壊死に対し早期治療促進を目的に最小侵襲治療が行われ、同時に、骨壊死発生そのものを予防に治療も行われています。薬物、再生医療等が利用され初期の段階であれば、良好な成績が各医療機関から報告されています。しかしstageが進行した例となると現時点では厳しい状況です。
「股関節鏡治療の光と影」
日本でも急速に広がりつつ股関節鏡による検査や治療。しかし実際の現場では成功例ばかりではなく、症状が悪化した例が後を絶ちません。そのため、実際に治療あたる医師の見解を改めて確認する必要があります。まず全体的な治療成績の印象としては、「寛骨臼形成不全(臼蓋形成不全)と伴う股関節唇損傷」「45歳以上」では成績不良が目立ち注意が呼びかけられています。
ある医療機関では50歳以上では人工関節に至る例が約20%と報告されていました。また近年話題に上がるFAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)と寛骨臼形成不全に伴う関節唇損傷では、損傷の程度や形態が異なる事が示されていました。最後の討議までは参加しませんでしたが、股関節鏡だけ全てを解決するのは難しく、必ず、人工関節とセットで向き合うべきと警告されていました。おそらくこの背景にはこの数年急増した変形性関節症患者さんに対する股関節鏡治療の術後成績を受けてと思われます。
「ボーダーライン寛骨臼形成不全の外来診療」
3つ目に聴講したのはボーダーライン寛骨臼形成不全と称される新たな概念です。昨年まではFAI、股関節唇損傷が注目を集めましたが、来年以降おそらくこの言葉を耳にする事が多くなると思われます。日本では変形性股関節症の大半がこの寛骨臼形成不全保有者と理解されます。しかしながら、同じようは骨の特徴を抱えていても、若年で発症する人もいれば中年以降発症する人、なかには何も症状が起こらずに亡くなられる方もいらっしゃいます。教科書的に被りが浅いからとの理由で「将来人工関節なる」
といって危機感を煽ったり、専門ではない医療者が外来診療を長期間引っ張り、症状の軽い方を進行期や末期に至らせ手術のできる医療機関を紹介する、といった事態を重く受け止めています。
「いずれ悪くなるから手術をしましょう」
「このままだと車椅子になる」
こうした医師の多少脅かし気味のアドバイスにも問題を投げかけていました。まだこの話題が取り上げられはじめの段階ですので結論には至っていませんが、ある大学病院の先生の報告が非常に印象的でした。臼蓋形成不全を長期に渡り追跡調査を行った結果、CE角20度以上のボーダーライン寛骨臼形成不全ではほとんどの例で症状は進行せず経過良好であったとのことです。
「成人への橋渡しとしての小児股関節治療」
最後に変形性股関節症の予防という意味で外せないのが幼少期からの指導です。医療機関では小児科がその役割を担いますが、股関節痛みを生じさせない、生涯に渡って自分の脚で歩けるかどうかは、小さい頃からの意識付けにかかっています。例えば、臼蓋形成不全を診断されると重篤な病を背負ってしまった、と医師から説明を受け深刻な事態と受けとる方もいらっしゃるかも知れません。ただ臼蓋形成不全にも先天的、後天的二つの要因があり、また先述の長期成績のように必ずしも臼蓋形成不全があるからといって悪化するものばかりではありません。仕事、運動経験、生活習慣、こうした点が症状の進行に関与していると思われます。最近は小学生に上がる前のお子さんもよくご相談にみえます。小児期の外科治療に熱心な先生では、骨切り手術を勧めます。それでも12~15歳まではまだ骨の成長はまだ分かりません。その先の予測も難しいでしょう。
マラソンランナーの有森さんは両股関節の脱臼をきちんと治療しその後大活躍されました。
個々それぞれ状況が違いますので、ご自身の状態を正確に把握する努力が必要です。今年はオランダでのOARSI、スペインでのBMJD、そして日本の股関節学会とそれぞれ趣向が異なる3つの学会で勉強させて頂きました。海外の変形性関節症に対する考え方と日本での受け止め方は丸っ切り違いますが、それはそれで非常に勉強になります。置かれた状況の中でどう最前を尽くすか。来年以降も学べる機会を増やしながら、変形性股関節症への理解を深め、幅を持たせ、症状と向き合うことで、ひとりでも多くの方の助けになれればと思っております。
ginzaplus 佐藤正裕