股関節痛との関わりは、大学病院時代の術後における「後療法」としてのリハビリにはじまり、手術を未然に防ぐ「予防」へと役割を変え、今では手術前と手術後の貴重な経験から、股関節痛の原因に対して身体的・精神的要因、両側からアプローチすることで未手術による痛みの解決に取り組んでいます。変形性股関節症の病態自体未だ不明な点が多いとされ、明らかに手術が必要な痛みとそうではない痛みが存在します。その判断には、何も従来のルーティン化した診療所見に頼ること無く、例えば、まず、保存的な介入を経てどう変化するのか。その場で消える痛みなのかどうなのか、よりクリニカルに現症を捉えられると手術の必要性の判断に役立つかも知れません。
手術が必要とされるような痛みとは想像を超える痛みです。保存療法では太刀打ちができません。痛みのレベルや質が全く異なります。この域にまで達すると手術後の達成感も得られ易いでしょう。一般に民間療法等でも扱われるマッサージも除痛効果は期待できるでしょう。現場でも積極的に導入されたなら、間違いなく痛み治療も激変することでしょう。
ただ、一つ申し上げなければならないのは、ほぐしを繰り返しても股関節痛の場合、持続効果は期待できないかも知れません。あくまでも私の経験ですが、一時的な症状の緩解は得られてもやがて効果は薄れ限界が訪れるものです。ほぐしにより可動域や痛みの改善が得られたのなら、更に治療的介入を加速するタイミングです。治療に携わる側のアイディアが求められます。これは股関節に限らずでしょうが、痛みのマネージメントにおいて特に重要視しているのは、個々の「ライフスタイル」への配慮です。日々の活動量をはじめとした運動の質、自ら「自主的」に生活を見直し身体の使い方を改める機会を積極的に持てたなら、持続的な効果も一段と増すことでしょう。
痛みを引き起こす“何か”主要な原因があるはずです。股関節の動きへの理解、それと、痛みと向き合う自主性こそが保存療法での成功を約束してくれるように思います。診療室から聞こえてくる「杖をつきましょう」「階段はやめましょう」でも「筋力を落とさないように」。この矛盾に気が付けた方はまだまだ回復が見込みます。偏った情報が溢れています。
股関節痛に対する正しい情報を共有できる場が必要でしょう。専門家の間では、所属により得意不得意があるのは仕方がなくても、患者さんへは、その専門性に左右されること無くベストな治療法、最もリスクが少ない療法が提案されるべきです。正確な情報をきちんと伝える機会が必要です。先週の土曜日は、朝日カルチャーセンター主催の勉強会に参加させていただきました。
前回に引き続き今回も満員御礼。改めて感謝申し上げます。当日は姿勢と歩行をテーマに、動画や写真を交え、正常歩行と股関節症患者さんでは一体何が違うのか、いくつかの場面に分けてご説明させていただきました。
筋力低下に繋がる股関節の動きとは何か?
可動域制限を引き出す荷重のやり方とは?
中殿筋が筋力低下に取り上げられる理由とは?
実技も踏まえ確認していただきましたが、皆さんもしっかりご理解いただけましたでしょうか。後になって私も知ったことですが、今回2度目のご参加の方もいらっしゃったようで大変嬉しく思いました。そして、股関節痛を抱えた方では外せない命題「骨盤の傾き」についても触れましたね。とにかく病期の進行に伴い動かなくなるのが、皆さんのこの骨盤です。筋力低下や可動域制限とも関わりの深い骨盤の傾き。ご自身に合ったベストな位置を、痛みの少ないこの時期にこそ、一歩踏み込んで探求しておきましょう。
また筋力強化の前には、筋肉の柔軟性を回復することが重要であることも述べました。それは、体操やストレッチだけではなく、膝や足首、他の関節と連動させながら適切に働かせること。正確に動きが実践できるようになれば、再び良質のゴムのように筋肉にも柔軟性が蘇ってきます。
また最後には、筋肉のコリが筋力低下に与える影響についてお話ししました。股関節痛を抱えている方では、もの凄いかたさの筋肉のコリを股関節まわりにいくつも抱えています。これらがあっては、筋力が無くなった誤解されても仕方がないでしょう。できることならば、専門家に一度触診をしていただき、実際に治療的なマッサージを受け、ご自身で自分の状態を早めに確かめておきましょう。
ginzaplus 佐藤正裕(理学療法士)