臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)
これまでも数多くの臼蓋形成不全患者さんにお会いして来ましたが、臼蓋形成不全があっても早期に適切な対応がなされていれば、変形性股関節症へは進行しない、と考えています。医療機関では臼蓋形成不全=手術の構図を示し、痛み止めや簡単なリハビリ指導でしのごうとします。積極的に進行を妨げるような治療が行われているのはごく僅か。現在の股関節痛治療は、手術を待つだけの医療、こう思われても仕方がないのかも知れません。
保存療法の観点から臼蓋形成不全をみた場合、これまでも研究報告がされているように、屋根の被りが浅いと物理的にどうしても、
大腿骨の骨頭(こっとう)といわれる部分が、外に弾かれるような力が加わりやすくなります。この力の影響で関節内の軟骨や関節唇、または骨や関節周囲に付着する筋肉に影響を与えることがあるのです。整形外科の先生方は、骨盤や大腿骨を切ったり削ったり「関節の形を整える」ことで余計なストレスを減らそうとしますが、こうしたストレスになるような力も「身体の使い方を整える」ことで十分にコントロールが可能です。
しかしながら、実際の方法論に関しては、日本では保存療法ではまだ確立されたものがありません。相変わらず病院では筋力トレーニングが主体です。色々な考えがあることも理解できますが、早期に痛みの改善も導こうとするならば、私が自信をもってお伝えできるのは、次のふたつです。
一つ目は(専門家の手による)ケアです。
臼蓋形成不全の方は、骨形態の影響を受け股関節の使い方に特徴があり、股関節周りの筋肉がかたく強張り始めます。片方の股関節周りには、約20本以上もの筋肉が存在しているといわれています。その筋肉を一本いっぽん健康状態をチェックしながら、まずは"治療的なほぐし"を行うことをお勧めします。これだけで、かつてあった動きの不具合や痛みが楽になることを実感できるでしょう。
しかしこれだけでは、股関節症の保存療法は終われません。他人に"やってもらうだけの保存療法"には限界があります。先にも述べましたように、保存療法の最終目標は、自ら、股関節への余計なストレス避ける動き方を学ぶことです。そのために必要なのが、
日々のトレーニングです。
トレーニングとはいっても、何も堅苦しく考えることはないでしょう。いわゆる一般的に保存療法で扱われるようなプールや筋力トレーニング、これらは興味があればはじめても良いかもしれませんが、無理にはお勧めしません。冷えて辛い、筋トレで痛くなったとの声は頻繁に聞かれることです。好き、嫌い、合う、合わない、個人差もあるでしょうから、自分が納得できる心底受け入れられるものから取り掛かることが痛み治療の鉄則です。外出好きな方は、歩いたって構いません。インドア派な方はお家に居たって結構です。ただ、大事なことは、歩く際には体重の乗せ方や階段の上がり方。お家に居るのであれば、椅子からの立ち上がりなど日々無意識の内に繰り返される股関節に負担がかかりそうな日常動作に気を付けることです。
細かいことでもありますが、普段の営みには欠かすことのできない動作の数々。痛みのあるこの時期だからこそ、どれだけ細心の注意を払えるかが、股関節症を進行させないためのポイントでもあります。特に股関節に負担がかかるとされる床や椅子からの立ち上がり、それと姿勢、歩き方。この3種目は、最低限しっかり抑えておきましょう。今、確認しておけば80、90歳となったときにその成果を実感いただけるでしょう。メスをいれるに至ようなひどい状態になるのを防ぐためには、日頃からのケアとトレーニングの意識です。
ginzaplus 佐藤正裕(理学療法士)