おはようございます!
60代、女性の方です。
関東の股関節専門病院で人工股関節の手術を受け、
その後の痛みが取れず、お越しになられました。
初めてお会いしたときには、
異常なまでの筋肉の緊張、お尻を振るような歩き方。
手術前からの身体の使い方の癖、それと、
手術による後遺症が痛みの原因として考えられました。
ここでの介入効果を検証するために、
病院で指導されたトレーニングメニュー一旦中止し、
その日は終了しました。
そして、3週間後の2回目。
初回時の痛みはすっかり消失し、明るい表情でおみえになりました。
そこで、今回の痛みが軽減されるまでの経緯、取り組みについて、
病院の担当の理学療法士にお話しして下さるようにお願いをしました。
大変驚かれていたようでした。
短期入院、早期退院が叫ばれる中、
患者さんたちの中には、
負担を強いられている方がいらっしゃいます。
手術後、痛みなく退院される方ばかりではなく、
やはり、問題を抱えている方も少なくありません。
これを「制度的の責任」と諦めてしまうのは簡単で、
我々理学療法士も
これまでの携わり方を改めて見つめ直す良い機会です。
入院期間が短縮されるのであれば、
それに見合った技術を習得しなければなりません。
時代の変化に伴い、リハビリ可能日数も変化します。
制度の責任にするのは簡単ですが、
今こそ理学療法士個人自らの力で、
患者さんとの向き合い方を変えるチャンスでもあると思われます。
相変わらずお決まりのroutine workをこなしているようでは、
要注意です。
(患者さんは)
・既製の運動プリントを配布されていませんか?
・手術後早期から筋力トレーニングばかり指導されていませんか?
・重りを付けた運動を勧められていませんか?
また、
(理学療法士、もしくは携わる治療者側は)
・「筋力」の話しばかり患者さんに説明していませんか?
・参考書、文献ばかりに頼っていませんか?
・日常動作の指導をちゃんとしていますか?
私の経験からは、
手術後がんばり過ぎた方に限って、術後のトラブルを多く抱えています。
ガチガチにコリかたまった筋肉で固めて、
リラックスすらできない様子でお越しになられます。
専門家の指導が入っているとはいえ、
運動内容、目指すべき方向性には、どうしても疑問を感じてしまいます。
これは、未手術を目指す方にとっても当てはまることですが、
あれこれやり過ぎると、
かえって、身体にとってマイナスに働く場合があります。
「筋力は付いたけど、跛行が治らない、
脚を引きずって歩いていしまう。」
との訴えが、あとを絶たないのも、
こうした運動処方に何か原因があるからではないでしょうか。
手術後早期に、
「何をやってきたか」、
「どういった刺激に身体に入ってきたか」
内容によっては、その後の3年、5年後の様子が予想されます。
初期の初期の段階でのリハビリの中身が、非常に重要なのです。
その重要な局面を誰に任せるか??
手術後に携わる病院の理学療法士は、
手術後のほんの一部分しかみえていない可能性があります。
皆さんが退院してしまえば、
その後どのような生活を送り、
どうした問題を抱えているのかなど、知る由もないでしょう。
本当に患者さんを想う病院であるならば、
執刀医師、担当理学療法士のフォロー体制が充実しています。
ただこうした医療機関も日本にはほとんど存在しません。
おそらく大多数の理学療法士が
その後の患者さんの生活を把握できないから、
今も昔も同じようなリハビリメニューが延々と繰り返されてしまうのです。
手術後であれば、
そのときでしか身に付けられない、抑えておきたい
いくつかの大切なポイントがあります。
こちらで拝見するほぼ全例で、
そうした指導は全く受けられず、日常生活に戻られています。
痛みが取れない、
杖が外せないのは、
「筋力が無いからだ」、と勘違いしてしまっている??
担当した理学療法士の極端な熱意!?が患者さんにも過剰に伝わり、
とにかく「筋力強化がリハビリだ!」と懸命に努力された方が、
今困難に直面しているのです。
問題なのは、こうした現実を
当時担当していた理学療法士が知らないことです。
術後に行っていたリハビリの成果がみえていない
(=みようとしない)ので、
何が上手く行って、何が上手くいかなかったのか分からない。
これでは、当然その後のリスクも想定できなくなります。
良くある問題としては、
内転筋のトレーニングです。
内転筋とは、
太ももの内側に位置する筋肉ですが、
最近、手術後のリハビリのメニューにもこれを鍛えようとした、
運動メニューが組み込まれていることがあります。
ところが、
股関節症の方はほとんど、
この筋肉は常に疲労困憊で、かたく縮こまっています。
これらが硬く縮こまると、
股関節を曲げる動き、開く動きに制限が生じます。
その筋肉を更に鍛えようとする発想ですが、
内転筋の短縮は、
靴下が履けない、爪切りができない、
こうした日常生活に影響を与えることになります。
先日お越し下さった方は、
手術後、街中のスポーツジムに通い始め、
下の図のような内転筋のトレーニングに励んでいます。
また、以前お会いした方は、
電車の座席で缶コーヒーや本を膝に挟んで
内転筋のトレーニングを習慣にしています。
股関節の可動範囲に問題が無ければ
影響は少ないかも知れませんが、
可動域、動きに問題がある以上、検討してみる必要がありそうです。
実際の手術の現場では、
内転筋を切らなければならなく方もいらっしゃる程です。
それだけ、うっかりすると負担をかけやすい筋肉なのです。
内転筋の働きは、
皆さんが日常生活では、非常に意識しにくい筋肉です。
本来、股関節症の方であれば、
座った状態、つまり股関節を曲げた状態で働いて欲しいのではなく、
股関節を伸ばしたときに、働いて欲しい筋肉です。
皆さんの姿勢をチェックしながら、
身体の"中心の軸"を感じてもらうわけですが、
その際、
皆さんからは、
「内股が働くのが分かります」との返答があります。
これがまさしく理想的な内転筋の反応、好ましい働きです。
※まだ感じていない方、早めに体感しておきましょう!
股関節症の方の大半は、
病期の進行に伴い、
大腿四頭筋や大殿筋といわれる筋肉が痩せる傾向があります。
その原因はのひとつは、
「この内転筋が、これらの筋肉の機能を代用する」
と、私は考えています。
本来の内転筋の作用とは、かじを取る補助的な役割のハズです。
それが、主役と代役がひっくり返ってしまうのが、
股関節症の方の筋肉の使い方の特徴です。
メスを入れずに、
内転筋の緊張を取り除くには、時間もかかりますし、限界もある。
本当に大変な作業なのです。
それと、大事なことは、姿勢と内転筋の関係。
例えば、
こうした姿勢、股関節症の方に多いですね。
この姿勢でいるとどうなるか。
この姿勢から動き始めると、
筋肉の働きは??股関節への影響は??
専門家なら容易に想像がつくはずです。
これについては、また時間があるときに取りあげましょう
可動域に問題を抱えた方に限って、
指導される傾向のある内転筋のトレーニング。
手術後は、
"鍛える"というニュアンスよりも、
"刺激を与える"、
といった方が長期的にみた場合、
リスクが少なく適切なのかも知れません。
改めて手術後の理学療法士の関わり、
そして現行のリハビリテーションの中身を再考すべきでしょう。
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