「痛み」とは、実に奥が深いものです。
これだけ世の中に痛みを抱えている方が多いにも関わらず、未だその機序は解明されてはいません。これは、股関節痛についても同様で、一般的には、骨や軟骨が痛みの原因とされますが、それほど単純なものではなさそうです。
私は「筋肉」に注目するよう呼びかけていますが、これも、完璧ではありません。ただ、筋肉へのアプローチを行っていると気がつくのですが、皆さん、元気に動けるようになられ、痛みを訴えることが少なくなります。治療の方向性としては間違いではなさそうです。
私の学生時代の経験ではありますが、当時、大館市の労災病院に泊まりがけで研修を受けていた時期がありました。担当させていただいたのは、糖尿病により下腿の切断が迫られた患者さまです。切断後、リハビリ室にて歩行訓練が開始されたのですが、リハビリの休憩中、常にさすっていたのは、なくなったはずの下腿部でした。
これは「幻肢痛(げんしつう)」と呼ばれる現症ですが、痛みとが長期に渡ると、患部を取り除いても痛みを訴えることがあります。
変形性股関節症の痛みも、非常に似ていると感じることが多くあります。
例えば、手術後の痛みです。原因とされた関節のパーツを取り替えても、手術直後、あるいは何年か経ってからでも、身体のあちらこちらに痛みを訴えるのです。
痛みとは、短期なら影響が少なくても、長期ともなるともっと複雑です。幻肢痛のような痛みであっても、あらゆる手段を尽くし、徹底的に痛みを抑えた場合には、手術後の痛みの発生が少ないことが報告されています。この点を理解しないで進めてしまうと、手術をし患部が治癒されたとしても、今度は新たな痛み(破局的思考やうつなど精神的な痛み)に悩まされることがあります。
近年「手術前リハビリ」が重要視されるようになったのも、痛み分野における研究の成果であるといえるでしょう。
今、ご自身が抱える痛みは、どういったタイプの痛みであるのか。いきなり手術ではなく、よくその性質を理解しベストな手法を実践しながら、解決へと漕ぎ着けていただきと思っております。
ginzaplus 佐藤正裕(理学療法士)