骨切り手術に比べ、手術後のリスクが広範囲に及ぶのが人工関節による手術です。骨切り術のように自分の骨を用いる手術ではないため、金属がその役割を果たします。そのため手術後に、予期せぬ合併症や後遺症がこれまでにも多く報告されています。
人工股関節手術後の代表的な合併症としては、片側の手術を済ませると反対側も手術に迫られることです。こちらの報告では、割合的にはそう多くはありませんが、初回手術後、5年くらいまでの間に約7%が反対側の追加手術が実施されています。年数が経てば、さらに増えることも予測されます。ただ、嬉しい情報も示されており、レントゲン画像上は進行していても手術を回避できている例も報告されています。筋力強化と術後リハビリが大切だと述べられています。
では、どうすれば、片側だけの手術で終わらせることができるのでしょうか。こちらは、理学療法士からの研究報告です。毎年病院ランキングでも常に上位、説得力がありそうです。報告では、約3割が片側手術の後に反対側へ移行すると述べられていますが、手術をした側の「小殿筋」と、手術をしていない側の「大殿筋」を鍛えれば、追加手術も回避できそうです。こちらも前向きなアドバイスです。
続いて、脱臼に関してです。脱臼については、絶対に脱臼しない、前方でも後方でも必ず脱臼のリスクがある、と常に議論の的になっています。どの位置に、どういう角度で設置するか、先生方の技量や考えに左右されます。ここで注目しているのは、患者さまの個性。「若年者」であり「柔軟性の高い方」は要注意です。確かに、これは健常者であっても当てはまります。通常の可動範囲以上に股関節を動かすことは、関節唇や骨同士の衝突、いわゆるインピンジメントを生じさせます。人工関節を挿入しているのであれば、機材の破損にも繋がります。
人工関節挿入後の患部以外の「痛み」は非常に身近な合併症のひとつです。こうした事態を防ぐために、各領域の専門家がデータを集め、同じエラーを繰り返さないための施策を練って下さっています。ここで紹介されるのは「手術前リハビリ」の重要性です。人工股関節の挿入以前に、おしりの筋肉「大殿筋」の筋力低下や萎縮がある方は、手術後も痛みに悩まされるリスクがあります。手術を決断したそのときから、術後を見据えたリハビリがはじまっているのでしょう。
ここでご紹介したのは、人工股関節の手術に生じる合併症や後遺症のほんの一例です。ここでは書き切れないほどの症状が股関節学会では報告されています。これらの情報は決して手術を検討されている方を怖がらせるものではなく、あくまでも最新の医学的な知見とご理解下さい。間違いなく人工関節の耐久性は向上しています。ただ、我々の身体がその速度についていけていないようにも感じられます。
人工股関節手術後の緩み:
https://ginzaplus.com/jp/blog/cat_1/1310/
人工関節のリスクについては、2022年にも一度過去の報告をもとにまとめておりますので、ご参考になさって下さい。
ginzaplus 佐藤正裕(理学療法士)