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[リスク] 人工股関節手術後の緩み
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[リスク] 人工股関節手術後の緩み
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2022年04月10日(日)
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変形性股関節症への考え方
今週からドイツで変形性関節症の国際学会がドイツで開催されています。
https://2022.oarsi.org
あいにくの世界情勢ですので昨年に引き続き今年もリモートでの参加ですが、時差もあるため興味のあるセッションは深夜に及ぶため目をこすりながらの試聴です。今朝は参加するグループからこんなニュースレターが送られてきて、改めて、世界の共通認識として変形性股関節症への運動療法が有効であることが理解されます。
人体への最大のリスク
さて、今日は少しだけ手術(人工関節)に関しても理解を深めておきましょう。
私が参加するOARSI(Osteoarthritis Research Society International)、変形性関節症の国際学会では、手術に関する話題はほとんど全くといってもよいほど上がりません。変形性関節症について基礎から治療の応用まではこの国際学会で勉強し、手術に関しては、日本の股関節学会から学ぶようにしています。
なぜ、これほどまでに世界の専門家からは人工関節が敬遠されるのか。
その答えは、学会に参加すれば容易に理解できるのですが、簡単に申し上げれば、まだ不明瞭な点が多過ぎるからです。そして、もう一つ、人工物の人体への計り知れないリスクの存在です。
2000年代から焦点に
▲J Nippon Med Sch 2001; 68(1)
人工股関節を受ける際には、必ず、説明に上がるのが「摩耗・入れ替え」の問題です。
要は人工関節は消耗品なのでいずれ入れ替えのタイミングが訪れるということです。
ただ、それがどういったメカニズムから入れ替えを迫られるのか、この点に関して納得のいく説明を受けていらっしゃるでしょうか。
かつてはリコール問題にまで発展した人工股関節。人工関節をなす部品同士の摩耗により、その摩耗した粉が関節周囲を浮遊し、骨をも溶かしてしまう「骨溶解」という現象から緩みを生じさせます。
更なるリスクは
上記論文の中では、摩耗した粉塵は股関節周囲に留まらず、循環器系に乗り、各臓器への影響にまで言及しています。
血圧の問題、Hear Attackの原因など、この手の論文は海外では多く目にします。人工関節自体の再置換は免れたとはいえ、人工関節による浮遊物が血管、リンパを通じ全身を駆け巡り、他の臓器へと付着し不調をきたす恐れもあるのです。
日本の股関節学会に参加しても、ここまでの情報をなかなか聞くことはできず、海外での研修会での資料を参考にしたり、今のこの時代ですから自ら求めていかない限り知り得ない、人工関節による合併症の問題です。進行性たる所以は術後も消失することはなく存在し続けることがあるようです。
冒頭でご紹介した変形性関節症の国際学会の舞台で人工関節に関する議論がなされないのは、こうした事実上の背景があるためと思われます。
最新の人工関節
▲
https://www.kyocera.co.jp/prdct/medical/aquala/index.html
摩耗粉により人体への影響を考慮し、日本の各メーカーでも摩耗しにくいタイプの開発が急ピッチで進められています。提示される数値も決して鵜呑みにできるわけではありませんが、人工関節を検討していらっしゃる患者さまにとっては、参考になる情報かも知れません。
これまでは、入院期間や傷口の大きい、少ないなど術式にこだわった病院選定が基準となっていたものと思われますが、もしかすると今後は、
「先生は、どんなコンポーネント(部品)をご使用ですか?」
と、将来的な合併症の発症を想起させるような質問が診察室から聞こえてくるのも、時間の問題かも知れません。
摩耗した人工股関節
▲Mawatari:人工股関節置換術における摩耗の予防 ClinRheumatol 18: 150~157 2006
それでは、実際に人工軟骨の欠損が確認された症例をご紹介させていただきます。
人工関節挿入後6年が経過し、軟骨表面に多数の傷が確認されます。
日本では「どの程度の活動度」で「どのくらい人工関節が摩耗するのか」、これについては研究室レベルでのデータは存在していても、実際の人間の体内に入った状態では、未知数です。
今まさに研究段階であり、本当の意味での人工関節の耐久年数が解明されるのは、いつになることでしょう。
アクティブ派は要注意
▲Won Yong Shon:Impingement in Total Hip Arthroplasty VOLUME 20, ISSUE 4, P427-435, JUNE 01, 2005
また海外では日本と異なり、手術後も運動制限を課すことなくQOLを優先されがちですが、それはそれでリスクも存在し警鐘が促されています。
ご紹介した症例は皆さん10年経たずして比較的早期のうちに人工軟骨への損傷が確認されます。
ここではImpingement(骨同士の衝突)という言葉で表現されていますが、これは、健常者の股関節でもそうですが、無理に関節を大きく動かし過ぎると、こうして骨同士がぶつかり損傷をきたします。
アスリートに生じる股関節唇損傷をイメージされると、わかりやすいかも知れません。
永遠の課題
人工関節の摩耗や耐久年数に関する研究論文を読み比べると、臨床家の間からもそれぞれの主張が聞かれ、必ず、相反するような意見が聞かれるわけですが、おおよそ中間地点で解釈する限り、まだまだ未解明な分野が多過ぎて人体への影響は計り知れないといったところが実情でしょう。
但し、痛みを抱えている患者さまを前に、今何ができるのかを考えた際には、最先端の医療技術を駆使した人工関節がその役割を担ってくれるのも事実です。
世界の研究家がデータを提示しガイドラインでもまとめて下さっているように、現時点での段階では、人工関節にならぬよう痛みを回避し、普段の日常をいち早く取り戻すための、運動療法が極めて重要であることもご理解いただけるのではないでしょうか。
痛みが強くなれば、正確な判断もしにくくなるものです。医療者によっては、本来手術の必要のない患者さまにまで人工関節を差し伸べようとします。
ここで大切なことは、もう一度立ち止まって大きく深呼吸です。
これまでの情報の整理と問題点の本質をご自身で理解し納得され、できるだけ身体に負担を強いることのない方法で、痛みからの解放を目指していただきたいですね。
ginzaplus 佐藤正裕(理学療法士)
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