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[研究論文] 臼蓋形成不全保有者の歩き方の特徴

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[研究論文] 臼蓋形成不全保有者の歩き方の特徴

股関節痛の予防には、日常動作に対する配慮は欠かせません。特に、保存療法においては、日常生活動作(姿勢、歩き、立ち上がりなど)の中から、痛みを誘発させるような"危険な股関節の運動"を修正していくことが大切です。

「正しく歩く」ことが股関節痛を未然に防ぐためにも重要です。体重の4倍もの負担がかかる歩行。ただ、何となくやり過ごしてしまうのか。それとも、しっかり筋肉を使い、体重を受け止めることができるのか。この使い方の差が、その後の股関節の寿命を左右します。

特に、日本人は、股関節痛を発症しやすい国民ともいわれています。骨の先天的、後天的な発育不全「臼蓋形成不全」を潜在的に抱えているひとが他の民族に比べ多いからです。臼蓋形成不全とは、ご存知のように骨盤側の屋根の浅い状態です。
ライフスタイル、職務形態、幼少期からの癖など、様々な要因が重なり合うことで、股関節へのストレスが蓄積し、やがて、痛みを発します。

初期であっても、末期であってもご自身の股関節状態に合った正しい歩きを日々実践することです。とはいっても、生まれてこの方、歩きの指導など受けてきたことが無い方がほとんどです。まずは、臼蓋形成不全を抱えた方の歩きの特徴を科学的に検証してみましょう。

一番の大きな特徴は(股関節の)可動範囲の狭さです。臼蓋形成不全の方は、もともと可動域が良好な方がほとんどです。ところが、どういう訳か、地に足を着け、立って、実際に歩いてみると可動域が極端に狭くなります。

この報告でも健常者と比較して、やはり臼蓋形成不全の方は、股関節の動きに問題がみられます。
※左のグラフが【健常者】、 右が【臼蓋形成不全】の方。

荷重位(体重を乗せた状態)での動きの減少は、後々、股関節へ致命的なダメージをもたらすことがあります。痛みの原因として扱われる、筋力低下、筋肉のコリ、軟骨の擦り減り、骨の変形などは、こうした機械的なストレスが元となり発症します。

典型例としてはダンス経験者の方たち。臼蓋形成不全の方たちでダンスを経験されている方は、現役のころは、動き過ぎるくらいよく動いていた股関節も年齢を重ねるに従い、徐々に可動域が狭くなってくることがあります。たとえ、歩き、移動動作に問題が無いと感じていても、動きに違和感を生じたときこそが、治療のタイミングです。

当初は、自覚的な症状も乏しいものです。日々、何千回と繰り返される体重を支える運動の中で、徐々に徐々に筋肉の働きのアンバランスをもたらし、関節内では、不適切な動きを繰り返し、皆さんが、痛みを感じたときには、既にレントゲン上にも軟骨の隙間の減少、骨の変形が始まっている。

こうした経過(変形性股関節症の前期や初期→末期)を日々間近に診ているからこそ、股関節に違和感を感じた方には、今すぐにでも日常動作の改善に取り組んでいただきたいと思っております。股関節にトラブルが起こり、移動能力が欠けることほど精神的な苦痛はありません。できるだけ早期に治療を受けることができれば身体に負担になる手術を回避することもできます。股関節の痛み治療とは、時間との闘いでもあるのです。
▲Kanai. Biomechanical investigation of ambulatory training in patients with acetabular dysplasia a Department of Physical Therapy, Toyohashi SOZO University School of Rehabilitation. Gait & Posture 28 (2008) 52–57
ginzaplus 佐藤正裕(理学療法士)



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