どんな治療にも100%がないように、これは優れた医療技術を駆使しても同じことです。関節を正常に近づけたところで、人為的なミスは生じ得るものだし、完璧に取り揃えるのは難しいのでしょう。
人工関節による脚長差の問題です。
脚長差は、手術の後「早期」に生じたものか、あるいは、手術後「何年も経過して」生じたものかによって対処方法がわかれます。本来ならば、インソールなどが必要がない方も、脚の長さなが違うからとの理由で、二重三重に歪みをもたらしていることさえあります。
今回のケースのように全く異なる箇所(頚椎=首)で、悲鳴を上げることも珍しくないでしょう。脚長差の影響は全身へも波及します。
また、多くのケースで生じるのが、反対側の股関節の痛みです。
片側に人工関節を挿入すると、反対がへも痛みが生じます。片側だけでは終わりにくいのが人工股関節の特徴でもあります。そのため、反対側の股関節へのケアや日々のリハビリが大切ではあっても、短期入院が主流となった今、こうした患者教育さえ行えないまま退院を余儀なくされます。
かといって、両側同時が良いのか?これにも最近では、異論を投げかける先生たちも増えてきています。
股関節の手術はあくまでも最終手段と捉え、根本的な要因をくまなくチェックし、手術前に今できることを全てクリアーし臨めるように準備をしましょう。
そして、手術前の悩みの一つの代表例は「骨嚢胞(こつのうほう)」の存在です。
医学的には、骨に穴が空いた状態と理解されています。この原因は明らかにされておらず、一連の加齢に伴う変化の中でも訪れることがあるため、骨嚢胞(こつのうほう)の存在を悲観し過ぎることもないでしょう。
問題は、動ける股関節を維持し続け、筋力をできるだけ落とさないよう心がけることです。
頻繁に遭遇する例としては、痛み治療にばかり専念し過ぎるあまり、大事な筋力までも疎かにしてしまうことです。歩かなくなるば、本当に、歩けなくなります。動く意欲が失われる前に、きちんと正しい知識で向き合いましょう。
そして何より大切なことは、症状を長引かせないことです。
変形性股関節症の痛みは長引かせるととても厄介です。痛みから抜け出せるタイミングで抜け出せないと対処療法に終始しがちです。変形性股関節症関連の痛みは皆さんの生活習慣、動きの「癖」と密接な関わりがあります。
身体外部への刺激だけではなく、皆さんの心の中から湧き起こる自発的な意欲に働きかけることが必要です。そのためには、発見、気付き、これまで感じることがなかったちょっとした変化にも気を配ることができたのなら、大きな一歩へと繋がるでしょう。
痛み治療とは、そんな些細な新たな経験から解放へと向かうのです。
ginzaplus 佐藤正裕(理学療法士)