[研究論文] 変形性股関節症後に待ち受けているものとは?
変形性股関節症との診断を受けると、その先にどんな将来が待ち受けているのでしょうか。
今年発表された変形性股関節症の将来を見据えた研究論文です。
皆さんも耳にしたことがあるでしょう。
サルコペニアやフレイル、骨粗鬆症。どれも健康寿命を脅かすリスク因子でありますが、変形性股関節症を診断された皆さんにとっては、この「フレイル」と最も関係が深いようです。
フレイル(Frail)とは直訳すれば「脆い」を意味し、日本老年医学会が提唱した概念では、要介護手前の状態を意味します。専門家らは、5つのチェックリストを作成し、要介護予防に警鐘を鳴らしています。
5つのチェックリスクにいずれも当てはまらない方は、Robust(健常)を意味し、健康に問題のない高齢者と判断されます。一方で、2つ以下の方は「プレフレイル」。このままの状態だとフレイルになってしまう可能性が非常に高い、フレイル前段階の高齢者の位置付けです。そして、3つ以上当てはまる方は、「フレイル」。つまりは、要介護状態とのことです。
変形性股関節症を診断されると、うっかりするとこの5項目全てにチャックが入ってしまそうな方もいらっしゃいますので、注意が必要です。
体重に関してみても、日本では海外のように肥満例は少なく、痩せ型の方が多い印象です。手術を示唆され、極端な運動不足に伴う筋力低下。手術までの間は安静療法が主体となりますので、心肺機能面にも影響をもたらします。そして特徴的な歩きの乱れ(跛行)は歩行速度に直結します。
この研究論文の中では、変形性股関節症になるとフレイルに陥りやすく、「セルフケア」、家事や身の回りの動作がしにくくなることを問題視しています。
特に「痛み」や「硬さ」などは、変形性股関節症では特有の症状です。決まって訪れるのは、靴下の着脱動作やつめ切り問題です。痛いからとの理由で避けて股関節を使っていると、やがて、本来できていた動作さえもできなくなってしまいます。そのまま放置すると瞬く間に関節はかたまり、今度は、普段の姿勢や歩き方にまで影響が及びます。
変形性股関節症の進行もフレイルも、ある程度、予想ができています。
症状の少ない今のうちから将来を見据えて、股関節の動かし方(ストレッチの方法を含む)や痛みのコントロールの方法などを曖昧にせずに、確実に確認しておきましょう。「健康を維持する」ことへの意識の持ち方次第で、こうした問題の多くは防げるのですから。
ginzaplus 佐藤正裕(理学療法士)